スピーチロックとはどういったものなのかについて見ていきます。介護現場における具体例や、その改善方法についてもしっかりと紹介しています。

スピーチロックとは何か、知っていますか?

介護において、身体拘束は絶対にしてはいけない行為の一つです。
今では殆どなくなったとはいえ、いまだにベルトでの動きの制限等の行為が行われています。

ですが、これらの行為は徐々に減少傾向にあります。
それは、明確な禁止行為として介護士に理解されてきつつあるからです。

しかし一方で、いまだにその数が減らない拘束行為が存在しています。
その行為とは、スピーチロックです。

多くの介護士が知らず知らずのうちに行ってしまうこのスピーチロック・・・
今回は、その定義や具体例、そして改善策について見ていきたいと思います。

スピーチロックとは

まずは、スピーチロックとはどういったものなのかについて説明していきたいと思います。
あまり聞きなれない言葉ではありますが、これも介護現場における拘束行為の一種なんです。

その内容に触れていきます。

スピーチロックの定義

スピーチロックの定義、それは『言葉による拘束』です。
つまり、言葉で相手の行動を制限してしまう行為全般をスピーチロックと指すことができます。

特に、介護現場ではこの行為が目立ちます。
しかも難しいのは、この行為を行っている介護士本人に拘束行為をしているという自覚が一切ない場合が多々あることなのです。

  • 介護現場における何気ない声かけ
  • 危険を防ぐために行っている声かけ
  • 先輩が使っているからと何気なく使っている言葉

これらすべて、実はスピーチロックである可能性が隠されているのです。

スピーチロックには明確なルールがない

実は、スピーチロックには明確な形やルールがありません。

言葉による拘束=スピーチロックと言えますが、どこまでが声掛けで、どこからがスピーチロックなのかを決めるのは介護士たちの判断にある程度ゆだねられてしまいます。

『Aさんにとって明らかな拘束行為に当たる声掛けであっても、Bさんにとっては普段の声かけであり、また利用者の方を守るための行為である』

こういった矛盾が介護現場で多々起きてしまっているのです。

そのため、多くの介護士が、自覚無くスピーチロックを高齢者の方たちに行ってしまっているのです。

言葉による拘束・・・見ての通り、具体的なイメージが浮かんでこない、なんともふわふわとした表現です。
次に、実際にどういった行為がスピーチロックなのか具体例をいくつか紹介していきたいと思います。

スピーチロックの具体例

「言葉だけは知っているけど、どの声かけがスピーチロックに当てはまるのかわからない」

介護士という介護のプロであっても、このスピーチロックに対する認識は甘いケースがいまだにたくさんあります。

ベルトなどを用いた具体的な拘束事例については、明らかな禁止事項として学んでいきます。
ですが、言葉だけという他の仕事にはないこの特殊な拘束は、残念ながら一部の施設ではあまり具体的な検討はされていません・・・

しかし、あなたが使っている言葉のいくつかもまた、スピーチロックに当てはまる声掛けである可能性は非常に高いです。
ここからは、6つの具体例を紹介していきます。

あなたの声掛け、大丈夫ですか?

ちょっと待って

食事を終えて立とうとしている高齢者の方に

「ちょっと待って」

よくある光景ですよね。
この声掛け、実はスピーチロックになるんです。

何かをしようとしている方に対する静止の声掛け。
これは、明確な拘束行為に当たります。

「○○さんは一人で歩くと危ないから」

「まだトイレに行っていないから」

介護士の方からすれば、その人を思っての声掛けである場合も多いのですが、実はこれ、拘束行為だったんです。

やめて

「やめて!それ食べないで!」

「やめてください!一人では危ないです!」

飾ってある植物を食べようとする方、介助なしでは歩けないけど、一人で歩こうとされる方。
どこの施設にもおられると思います。

こういった方たちの身を守るために行っている声掛け。
実は、これもスピーチロックの範疇に入ってしまうんです。

「やめて」は、動作を禁止することを相手に指示する声掛けです。
ここで重要なのは、相手の身を思っての言葉であっても、時としてそれは拘束行為=違法行為に当たってしまうという事です。

早く食べて

最近は減ってきましたが、人材不足などの理由でなかなか仕事が進まない介護現場ではよく聞かれる言葉かもしれません。

「早くご飯食べて」

1時間かけて1食を食べる方も多い高齢者施設では、ついついこの言葉が口から出てしまいそうになるものです。
確かに、介護士からすれば早く食べてもらって早く食器を片付けたいですもんね。

この声掛け、介護士としてもすべきではない声掛けではあるのですが、それ以前にスピーチロック、つまり拘束行為に当たるものでもあるんです。

「早く食べて」

高齢者の方には高齢者の方の食事ペースがあります。
それをせかしている時点でダメな声掛けではありますが・・・

「早く」と声掛けすることは=ゆっくり食べるという行為を禁止しているとも言えます。
そのため、高齢者の方の行為を抑制することに当たるためこちらも拘束行為と言えるのです。

この声掛けは、改善しようもない声掛けです。
何故なら、介護士の利益のためのみに発せられた言葉だからです。

絶対にやめましょう。

そこにいて

「ちょっとそこにいて」

「そこで待ってて」

こちらも、よく使う声かけなのではないでしょうか。

私たち介護士は、高齢者の方たちのけがや転倒防止のため、ついついその行動を不安視してしまいます。
そのため、自分の目が届かない範囲にいる方に対して、この声掛けをしてしまいがちです。

また、離設(施設を離れる行為)の危険性が高い方に対してもこの声掛けはよく使われています。
ですが、こちらもまたスピーチロックの一種に当たります。

「そこにいて」と言う声かけは、高齢者の方たちの自由に動く権利を侵害しているとも取れるからです。
自分に当てはめて考えてみてください。

  • 買い物に行こうとしたら「そこにいて」
  • 家に行こうとしても「そこにいて」

・・・息苦しく感じてしまいますよね(^^;)

そんなことしないで

特に認知症の方に対していってしまいがちな声掛けがこちら。

「そんなことしないで」

なるほど、確かについつい言ってしまう言葉ではありますね。
認知症の方の行動は、時に私たちの想像をはるかに超えたものである場合も・・・

もちろん、その行為一つ一つには、認知症の方にとっては意味のある行為であり、ちゃんと理由も存在しています。
ですが、それは本人にしかわからない場合も少なくありません。

その方と話をせず、理由も聞かずに「そんなことしないで!」と口走ってしまった経験のある介護士の方、多いはずです。

ですが、この声掛けは高齢者の方たちの行動の自由を抑制する言葉であり、当然拘束行為であるスピーチロックに該当しています。

どうしてそんなことするの

理解できない行動に対して

「どうしてそんなことするの」

と言う声掛けをした経験はありませんか。
一見すると相手に寄り添った言葉に思えるこちらも、実はスピーチロックに捉えられてしまう場合があるんです。

相手と話をするためも声掛けにも思えるこの言葉ですが、一方で【そんなこと】に当たる行為を禁止している言葉にも受け取れるからです。

理由を聞いているのではなく、結局は相手の行動を罰しているような言葉であるため、拘束行為とも捉えられてしまうようです。

スピーチロックを改善するための方法

では、スピーチロックを改善するための方法はないのでしょうか。

実はこれ、結構簡単な方法が存在しています。
それは、ほんの少しだけ声掛けを変える・工夫するという事です。

上の例を活用して、いくつか具体例を紹介していきます。

「ちょっと待って」は、この一言で終わらせるのではなく、相手を思っていることをしっかり伝える言葉に変更します。

  • 「ちょっと待ってください、○○さん。私も、一緒に行ってもいいですか?」
  • 「ちょっと待ってくださいね。押し車を持ってくるので、それを使ってもらってもいいですか」

見守りが必要な方には、スタッフが一緒に行くことの許可を尋ねる。
押し車を持たず一人で歩こうとする方には、押し車を持って歩いてもらうよう理由を説明し、待ってもらう。

相手に、何故この声掛けを行うのかしっかり理由を伝えることが、スピーチロック改善の第一歩です。
また、相手に選択肢を提供することもいい方法です。

「やめて!」の一言では、ただ相手に好きなこと・やりたいことを禁止しているのみです。
ですが、少し表現を変えて

  • 「それを触ると危険ですので、こちらで○○しませんか?」
  • 「それよりも、こっちでお菓子を食べませんか?」

と言う声掛けを行います。
上の例で言いますと、植物などを食べる方の場合は、お腹が減ったためにそのような行為に出ている場合が多いです。

それなら、食べても良いものを提供することで、小腹を満たしてもらえばいいのです。
たったこれだけですが、異食は激減し、高齢者の方たちも落ち着きを取り戻すものです。

上の声掛けでは、選択肢はスタッフが提供していますが、あくまで主導権は高齢者の方にあります。
このように、相手の意思を尊重する声掛けを意識することがスピーチロックをなくしていくうえで必要不可欠な考え方と言えるのです。

言葉で縛ることも立派な拘束行為です

いかがだったでしょうか?
今回はスピーチロックとは、ということでスピーチロックに関する説明や具体例、改善方法などをお伝えしてきました。

一般的な拘束とは違い、スピーチロックは違法性も薄く、束縛性も高くない声掛けのように思えます。
ですが、体を縛ることと、言葉で心を縛ることに何の違いもありません。

どちらも高齢者の方にとっては苦痛でしかなく、また、立派な拘束行為でもあります。

「どうせ誰も見てないし・・・」

そういった考えで何気なく発した言葉かけが、高齢者の方の行動すべてを縛ってしまい、自由を奪ってしまいます。

スピーチロックを行ったことにより、高齢者の方の活動意欲が低下。
そこから認知症を発症し、寝たきりになってしまった・・・

このような事例は数多く存在しています。
高齢者の方たちの人生の最後をより良いものにするのは、介護士としての大切な大切な使命です。

スピーチロックは、それと正反対の行為と言えるのです。
違法、という意識が薄いのもこの行為の大きな課題の一つと言えます。

声掛けは、意識しなければなかなか直すことはできません。
今日から少しづつでも意識して、より相手の事を思う声掛けをしていけるよう心がけていきましょう!!

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